アメリカのカリフォルニア州、テクノロジー産業の中心地であるシリコンバレーにおいて、他のどの企業とも違う独特の存在感を放ち、世界のビジネスの根幹を握っている企業があります。
それが、世界最大級のビジネスソフトウェアおよびデータベース企業である「Oracle(オラクル)」です。
この記事では、一般の消費者からは見えにくいけれど、世界中の銀行、航空会社、政府機関などが絶対に手放せないオラクルの「データベース技術」の仕組みから、強烈な個性で会社を牽引してきた創業者ラリー・エリソンの歴史、そして現在注力しているクラウドコンピューティング市場での戦いまでを徹底的に深掘りして解説します。
Oracle(オラクル)とは?ビジネスの心臓部を握るIT企業
Oracle(オラクル)は、1977年に設立されたアメリカの巨大テクノロジー企業です。
長らくカリフォルニア州のシリコンバレー(レッドウッドシティ)に象徴的な本社を構えていましたが、現在はテキサス州オースティンに本社機能を移転しています(それでもシリコンバレーにおける同社の影響力と歴史的意義は絶大です)。
圧倒的シェアを誇る「リレーショナル・データベース(RDBMS)」
オラクルのビジネスの核心であり、最大の強みとなっているのが「データベース管理システム」です。
膨大なデータを整理・蓄積し、必要なときに瞬時に検索して取り出せるようにしたシステムのことです。
例えば、銀行の口座残高や取引履歴、航空会社の予約システム、オンラインショッピングの在庫管理や顧客情報など、絶対に消えては困る、そして一瞬のミスも許されない極めて重要なデータがあります。
オラクルは、これらの複雑なデータを複数の表(テーブル)に分けて関連付けながら管理する「リレーショナル・データベース(RDBMS)」という技術において、世界中で圧倒的なトップシェアを誇っています。
大企業が一度オラクルのデータベースで基幹システムを構築してしまうと、システムを丸ごと他社に乗り換えることはリスクが大きすぎるため、継続して巨額のライセンス費用や保守費用を支払い続けることになります。
この強固なビジネスモデルが、オラクルの莫大な利益を生み出しています。
創業者ラリー・エリソンの野望とシリコンバレーの歴史
オラクルという企業を語る上で、共同創業者であり、長年にわたりCEOを務めたラリー・エリソン氏の存在は絶対に欠かせません。
IBMの論文からビジネスチャンスを発見
1970年代、ラリー・エリソンは仲間と共に小さなソフトウェア開発会社を立ち上げました。ある時彼は、巨大IT企業であるIBMの研究者が書いた「リレーショナル・データベース」に関する学術論文を読みます。
IBMは当時、その技術を商用化することに消極的でしたが、エリソンはその潜在的なビジネス価値を瞬時に見抜きました。
彼はIBMの理論をもとに、世界で初めて商用のリレーショナル・データベース製品を開発し、それをCIA(アメリカ中央情報局)に納入することに成功します。このプロジェクト名が「Oracle」であり、のちにこれが社名となりました。
シリコンバレーにおける強烈な個性とライバル関係
シリコンバレーには、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツといった有名な起業家がいますが、ラリー・エリソンもまた、非常に強烈な個性を持つカリスマ経営者として知られています。
彼はビジネスにおいて非常に攻撃的な戦略をとることで有名であり、特にマイクロソフトやSAPといった競合他社に対しては、公の場で強烈な批判や対抗心をむき出しにしてきました。
(ちなみに、スティーブ・ジョブズとはシリコンバレーで親友同士であり、Appleが危機に陥った際にはジョブズを強く支援したエピソードもあります。)
また、ヨットレース(アメリカズカップ)への巨額の投資や、ハワイのラナイ島を島ごと買い取るなど、その豪快な私生活も常に注目を集める、まさにシリコンバレーを体現する大富豪の一人です。
積極的なM&Aによる「総合IT企業」への拡大
データベース市場を制覇したオラクルですが、彼らはそれだけに留まりませんでした。
企業のあらゆる業務を支えるアプリケーション事業
2000年代以降、オラクルは「企業のあらゆる業務を自社のソフトウェアで網羅する」という戦略のもと、怒涛の企業買収(M&A)を繰り返します。
人事管理システム、財務・会計システム、サプライチェーン管理システムなど、企業活動に不可欠なソフトウェア(ERPアプリケーション)を提供する有力企業を次々と巨額で買収し、自社のデータベース技術と統合していきました。
これにより、オラクルは単なるデータベースの会社から、企業のITインフラをすべて一手に引き受ける「総合ビジネスソフトウェア企業」へと巨大化したのです。
クラウドコンピューティング市場での逆襲
現在、テクノロジー産業における最大の主戦場となっているのが、自社でサーバーを持たずにインターネット経由でシステムを利用する「クラウドコンピューティング」の分野です。
出遅れからの猛追撃
実は、オラクルはこのクラウド市場への本格的な参入において、Amazon(AWS)やMicrosoft(Azure)、Google(GCP)といったライバル企業に大きく出遅れてしまいました。ラリー・エリソン自身が、初期にはクラウドという概念に対して否定的な発言をしていた時期もあったほどです。
しかし、オラクルはその遅れを取り戻すべく、近年は社運を賭けて「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」という自社のクラウドプラットフォームの構築と普及に猛烈な投資を行っています。
オラクルクラウドの最大の武器
他社のクラウドに対するオラクルの最大の武器は、やはり「自社の強力なデータベース技術と最も相性が良いクラウドである」という点です。
すでにオラクルのデータベースをオンプレミス(自社サーバー)で利用している世界中の大企業に対し、「最も安全に、最も高いパフォーマンスでクラウドへ移行できるのは、他でもないオラクルのクラウドだけだ」と強力にアピールし、急速にクラウド市場でのシェアを拡大しつつあります。
シリコンバレーの巨大企業たちの全体像を知るには?
オラクルのような「BtoB(企業間取引)」を主とする企業から、GoogleやApple、Facebookのように「BtoC(消費者向け)」のサービスを提供する企業まで、シリコンバレーには多種多様なテクノロジー企業が集積し、互いに協力し、時に激しく競争しながら世界を変革しています。
「オラクルのライバルであるMicrosoftやGoogleはどんな企業なの?」
「そもそもシリコンバレーにはなぜこんなに巨大企業が集まるの?」
シリコンバレーの歴史的な成り立ちや、情報技術産業の中心地としてのエコシステム、そして他の有名なIT企業や起業家たちについてさらに詳しく全体像を把握したい方は、ぜひ以下の基礎知識をまとめた親記事を参考にしてみてください。

この記事を読むことで、オラクルがどれほど熾烈なテクノロジー競争の中で、独自かつ強固なビジネスモデルを築き上げてきたのかが、より深く理解できるはずです。
まとめ:世界経済を裏側で支える「絶対に止まらない心臓」
今回は、「Oracle(オラクル)」というキーワードを軸に、その成り立ちからビジネスの中核技術、そしてシリコンバレーにおける存在感について徹底的に深掘りして解説しました。
✔創業者ラリー・エリソンがIBMの論文からビジネスチャンスを見出し設立した。
✔積極的なM&Aにより、データベースだけでなく企業のあらゆる業務ソフトウェアを網羅。
✔近年はクラウド市場(OCI)に巨額投資を行い、AmazonやMicrosoftを猛追している。
✔シリコンバレーの歴史の中でも、非常に強烈な個性と強固なビジネスモデルを持つ企業。
私たちがスマートフォンから銀行の口座残高を確認したときや、ネットで飛行機のチケットを予約したとき、その一瞬の処理の裏側には、オラクルが構築した巨大で堅牢なデータベースシステムが間違いなく稼働しています。
華やかな消費者向けサービスの裏で、世界中の経済活動という「絶対に止めることが許されない心臓」を強力に動かし続けている巨人。それがオラクルという企業の本当の凄さなのです。


